だれかに話したくなる本の話

「どうしたら暴力はなくなるのか」元PL監督が明かす野球部の闇

■「本気で選手と向き合っていたから、その方法論として手を出した」

本書では、同校野球部の元指導者など関係者が、「暴力はいけないこと」としたうえでではあるが、「苦難を乗り越えた時に、大きな自信になる」と、そこには暴力が含まれていたはずの下級生の厳しい環境を擁護したり、「本気で選手と向き合っていたから、その方法論として手を出した」と語るなど、どこかで暴力のポジティブな側面を信じているようなコメントが散見される。

かつては当然のようにまかり通っていたこうした価値観が通用しない時代になったことは、暴力事件が頻発した2000年代のPL野球部関係者もわかっていたはずだ。しかし、それでも部が本質的に変わることができなかったのは、この価値観を完全に捨て去ることができなかったからではないか。

それは、名将として知られる中村順司氏以降、歴代監督をすべてPL野球部OBが務めてきたことと無関係ではないだろうし、監督を任命してきた学校側や母体であるPL教団とも関係があるはずだ。そして、本書に書かれている休部までのいきさつの全体を見ると、その原因は、暴力事件よりもむしろ「学校・教団と野球部の関係悪化」にあったようである。

1980年代のPL野球部黄金期には、学校と教団、信者、そして野球部の間に、「教団と学校が野球部を支援し、野球部が甲子園で勝ち、教団と学校の認知が上がり、信者や生徒が増える」という良いサイクルが生まれていた。

しかし、このサイクルはいつしか逆回転を始めてしまった。

歯車が狂い始めたのはいつからだったのか。日本の野球史に残る強豪校の盛衰記である本書を読んで、ぜひ確かめてみてほしい。

(新刊JP編集部)

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山田洋介

1983年生まれのライター・編集者。使用言語は英・西・亜。インタビューを多く手掛ける。得意ジャンルは海外文学、中東情勢、郵政史、諜報史、野球、料理、洗濯、トイレ掃除、ゴミ出し。

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